オレゴン地域霊長類研究センターのS・Bたちが、サルの脳をあらためて調べてみると、やはりERBは存在した。
セロトニンを作る細胞の核内に、新しい種類のエストロゲン受容体が見つかったのである。
10年間、やつきになって探してきたのに、何も見つからなかった。
「ティーンエイジャーは、ホルモンに駆りたてられている。
身体成熟期に起きるホルモンの激しい変動が、彼らを大きく揺るがすのよ」とBは説明する。
しかし子どもたちを揺るがす嵐を、原因ごとに区別できるものだろうか。
内側の要因、つまりホルモンの満ち干きと、MTVの見すぎや母親の過干渉といった外から吹いてくる風を分けることは可能親との関係が良好でなく、テストステロン濃度の高い男の子は、学校をさぼる、嘘をつく、飲酒をする、盗みを働くといった危険な行動に走りがちだ。
親との関係が悪くて、テストステロン濃度が低い男の子は、うつ病にかかりやすい傾向があった(テストステロンが少ないとなぜうつ病になるのか、詳しい因果関係は不明である。
少ないテストステロンがエストロゲンの低下を招き、さらにはセロトニンを不足させるのではないかとBは推測する)。
いっぽう女の子は、テストステロン濃度が低く、母親との関係が悪いと、危険な行動に出ることが多い。
同じぐらいの濃度で、今度は父親との不和をかかえていると、うつ傾向が見られた。
もちろん希望のもてる結果もある。
男の子も女の子も、家族と円満に過ごせていればまったく問題はない。
テストステロンの濃度が高かろうと低かろうと、関係ないのである。
この問題に取りくんでいるのが、ペンシルヴァニア州立大学でテストステロンを研究するA・Bだ。
Bたちは、ペンシルヴァニア州中部で、安定した中流家庭400世帯を対象に、ティーンエイジャーのテストステロン濃度を定期的に測定した。
これまでに得られた結果を見ると、どんな場合でも環境という外の「風」のほうが、テストステロンという「潮の干満」より優勢だということである。
ホルモンのさまざまな影響を解明するため、神経科学者のM・Bはラットに注目した。
そして慎重に実験を進め、環境や行動がホルモン分泌や脳の組織を変化させること、そしてホルモンと脳の組織もたがいに影響しあっていることを立証した、すべてがつながってループになっている。
ラットから人間にいたるまで、オスとメスの「明白なちがい」は、取っ組みあいをするかしないかだとBは指摘する。
世の中には本棚と言えるものと、本棚とは言えないものの2種類があるようです。
